韓国でママ友と始めた内職がブラック企業も真っ青だった話

「子どもが小学校のうちは家にいてほしい」という夫の願いもあり、今は専業主婦の私。専業主婦の問題点のひとつが、「経済的に夫の収入に依存しなければならないこと」だと思う。

ちょうど今から5年前。
私は韓国人ママ友と内職に挑戦したことがある。「自由に使えるお金がほしい!」というのが理由だが、その内職が超絶ブラックだったのだ。逆におもしろすぎるので、ここでお話ししたいと思う。

ママ友が誘ってきた「内職」

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「もし暇だったら、コーヒーでも飲みにこない?」
子どもと同じクラスのママ友、Aさんが話しかけてきた。

Aさんは3月に引っ越してきたばかりのママ友。
マンションの隣の隣の部屋に引っ越してきてからというもの、なんとなく話すようになって、3ヶ月経った今ではお互いの家を行き来するようになっていた。

Aさん宅にお邪魔しコーヒーを御馳走になりながら、さっそく彼女は切り出してきた。

「お互い専業主婦で色々と大変じゃない?よかったら一緒に内職してみない?」

「へー、内職。どんなの?」

「化粧品の内職なんだけど、単純作業だって。ひとりでもいいと思ったけど、どうせなら手分けして作業したら効率いいじゃない?報酬はちゃんと分けるから。自分のためのお金っていくらでもあったほうがいいじゃん。」

専業主婦の立場上、家族に対してお金を使うのはよくても、自分のことにお金を使うのは罪悪感がある。化粧品の購入費用や美容院費など、夫が頑張って稼いだお金を無駄にするみたいで使いにくい。

でも、内職をすれば自分のためのお金ができる。
自分の力で自分のためのお金を稼ぐ。
なんと魅惑的な響き!

私は即答していた。
「詳しい内容教えてくれる?」


さっそく内職開始!その内容とは?

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フェイスパックをご存知だろうか?
美容液がひたひたのシートを顔に乗せて、お肌のうるおいや美容成分補給につかうのだ。

日本だと、ル○ルンやサボ○ーノなどが人気だし、韓国製だとメディ○ールなどが知られている。美容マニアだったら実際に使っている人も多いだろう。

その「フェイスパックの切り離し」が内職の内容だった。

パックに使われている紙みたいな不織布のシート、あれを顔の形に切り抜くのは、実は機械ではなく人によって行われていたのだ!

当時、機械では不織布を顔の形、とくに目や鼻の部分をうまく切り離す技術がなかった。きれいに切りはずすために一つひとつを手作業で行っていたのだ。

「単純な仕事なんだけどね。ただ量がね、びっくりだよ……」

Aさん宅で私が見たのはの大きな白い紙の束。
新聞紙大の不織布に、顔4つ分のフェイスパックの切り目が入ったものがドーンと置かれている。

「これを顔の形に切り離していけばいいんだって。毎日のノルマはないけど、1週間後に取りに来るからできるだけやっちゃおう!内職代はその時の出来高でくれるって!量が多いけど2人でやれば大丈夫!」

おお、出来高即金!
すぐにお金が入るなんて素敵すぎる!

さっそくAさんと私はシートの切り離しに取り掛かるのだが……。

シートの顔輪郭部分を切り離すのは簡単だ。しかし、目と鼻の部分は下半分に切り込みが入り、上半分はくっついているので、油断すると全部くり抜いてしまいそうになる。

それに顔へのフィット感を高めるために、ところどころスリットが入っている。油断するとそこからべりっと切り込みが入ってしまう。

失敗は「不良品」扱いになり、その分お金がマイナスだ。

ひたすら切り離し。また切り離し。
うっかり目の部分まで切り離してしまったもの2枚。
さっそく不良品の生産。ヤバい。

不織布に切り取り線は入っているものの、かなり丁寧に切り取っていかないとフチがすぐ毛羽立ってしまう。

これは思ったよりも気を使うぞ!

その日はAさんとろくに会話もせず、朝9時半から午後1時半、子どもたちのお迎えの時間までひたすら切り離しに集中したのだった。


1週間が経過。もらった内職代はなんと……。

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それから子どもを学校に送り出してすぐAさん宅に直行。ひたすらフェイスパックのシート切り離し作業をした。

作業が細かいので(なんせ不良品を出せばマイナス!)全部切り離さないように、毛羽立たせないようにと作業に全集中。
私もAさんも慣れない作業であたふたしているので、お互いロクに会話もできない。

そうこうしているうちに、1週間経過。
2人でなんとか1,200枚ほど作成した。
顔で換算すれば1,200顔分!
私たち頑張ったじゃーんなんて思っていたのだが、甘かった。

「8,000ウォン(約800円)です」

業者のおっさんはズバッと容赦なかった。
切り離したフェイスパックをあれこれひっくり返してチェックし、算出したお金がこれっぽっち。

1000枚=8,000ウォンが買取相場だというのだ。


あれだけ頑張ったのに、1週間の労力がひとり4,000ウォン(約400円)!
働くことの厳しさ、現実をこれでもかと思い知る。
そして”労力ばっかりかかって低賃金”という内職の超絶ブラックな実態を知ったのだった。

内職によって美容には貢献したかもしれない

それから内職はどうなったのかというと、あと1週間ほど続けてやめてしまった。だって、2週間でやっと8,000ウォンじゃあまりにも割に合わなすぎる。

業者の方は「慣れればスピードアップするから、もっと稼げるようになる」というものの、引き止め文句にしか聞こえなかった。(実際引き止められたと思う)

Aさんも「この内職で肩こりがひどくなった」とブーブー文句を言っていた(笑)

付け加えておくと、私達が内職でひたすら切り離していたフェイスパックは、日本でも有名な某メーカーの製品。日本でも通販などで発売されてたんじゃないかな?

だから私の内職は、皆さんの美のお手伝いを間接的にしていたのかもしれないなーと遠い目で思ったりもする。

でも、もう絶対やらないけどね!